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最近のストレスフルな世の中で大腸の憩室疾患が増加しています。今回British Medical Journal(BMJ)に食物繊維の高摂取で、憩室疾患による死亡リスクが低下したという論文が載りました。腸の憩室性疾患は腹痛、腹部膨満、便秘等の症状を呈し、一般的な腸疾患でありますが、アフリカと比べ英米などの先進国で患者数が多く、西洋文明化による疾患とよばれてきました。その理由は腸の憩室は十分な繊維質を摂取しないことが原因で出来ると考えられてきたからです。これまでの研究では食物繊維の不足が憩室疾患と関連することが示唆されていて、菜食主義では肉食の人と比べリスクが低いと考えられていましたが、これを実証したエビデンスはありませんでした。そこでオックスフォード大学のがん疫学部門のCrowe 博士らの研究チームががんを中心とする各種疾患と栄養との関連を前向きに調査する大規模コホ―ト研究で菜食や食物繊維の摂取と腸の憩室性疾患リスクとの関連について検討しました。平均11.6年の追跡を行い、対象47033人のうち、15459人が菜食主義者で、812例の憩室性疾患が認められ、そのうち806人が入院し、6例が死亡しました。憩室疾患のリスクは肉食の人に比べ菜食主義の人のほうが低く、1日の食物繊維摂取量との比較的高い(約25g)群では、低い群(14g未満)に比べ憩室性疾患による入院と死亡のリスクが低いと言う結果が出ました。ちなみに日本の場合成人男子の1日摂取目標量は20g、女子の場合は17gとなっています。食物繊維の多い食品からみてみるとゆでいんげんでは約150g、納豆約300g[45gのパックだと7ないし8パック)、玄米だけだと1400gに相当します。またキノコ類のシメジだと640g、大豆だと約300g相当となります。なかなか大変な量ですが、食品を組み合わせることによりなるべくたくさんの食物繊維を摂取し、大腸憩室疾患の予防をしましょう。
前々回のコラムにも書いたのですが、新ニッポン人の食卓の再放送番組をみて最近の回腸(小腸を2つに分けた時の大腸に近い小腸をこのように言います)の変化の謎が解けた様な気がしました。前回書いたように、食事の欧米化、インスタント食品、買ってきた総菜等いろいろな原因が回腸の変化を引き起こしていると考えられますが、和食離れ(確かに洋食はおいしいのですが)、食習慣が一番大きな原因なのではないかと思われます。いろいろと癌に対する研究や、メタボリックシンドロームに対する予防等が行われていますが、根本の食生活、食習慣を改善しない限り、よくならないように思えます。日本に肉食の習慣を持ち込んだアメリカでは、子供たちに野菜を中心とした食事を出すようにしたり、コレステロール値を200以下に保つ運動をしているみたいですが、肉食文化を導入された日本では、コレステロール値はますます高くなり、免疫能は次第に落ち、将来は暗いようです。寿命を延ばすのは、明治、大正、昭和30年くらいまでの人で、それ以降は寿命は短くなるのではと愚考しています。
腹部の症状のある人の胃と腸の同時検査を始めて約20年になりますが、同時検査をしてみるといろいろなことが見えてきます。それまでは胃と腸を分けて考えていましたが(西洋医学ではそのように教育される)、検査をしてみると、消化管としてつながっていることが分かります。また消化管は上から下に流れるシステムとなっていることもよくわかります。病気の理解に、最近になりようやく脚光を浴び始めた、アレルギー性鼻炎と気管支喘息のつながり(one way,one disease(一つの通リ道に一つの病気))と同じで、過敏性腸症候群のある人は、逆流性食道炎を合併することが多い(一つの消化管には一つの病気)傾向があります。両方の病気に関与しているのは自律神経のため、自律神経のうち交感神経が過敏な人(交感神経が優位な人)がこのような病気を発症する可能性が高いことが考えられます。そして下位の病気(過敏性腸症候群)のコントロールができると上位の病気(逆流性食道炎)のコントロールもできるようになることを考えると、この考えの正しさがわかります。病気を分けて考えないで、集団として考える必要がありそうです。
最近の大腸内視鏡検査をしてつくづく感じることは、以前に比べて小腸粘膜が大きく変化していることです。以前は内視鏡を盲腸まで進め、回盲弁(小腸の末端と大腸の境)をくぐるとリンパ炉胞が普通に認められ、ああ小腸に入ったなという状態でしたが、最近では回盲弁を通過しても大腸粘膜と変わらない風景が(リンパ炉胞のない)認められます。丁寧にみるとリンパ炉胞は見出せますが、絨毛も丈が低くなり、色素を散布すると初めて、正常の小腸粘膜(微絨毛から構成されている)に絨毛のないリンパ炉胞がどうにか見出されます。リンパ炉胞は免疫(特に集合リンパ炉胞のパイエル板上にM細胞が認められ、これが腸管免疫)に関与しています。このような変化がなぜ起こったのかと考えると、和食から洋食へ、野菜食から肉食への変化、インスタント食品等々の原因が考えられます。非常に面白いことに夫婦で検査をされた患者さんで、夫には多数のリンパ炉胞が認められ、妻には目立ったリンパ炉胞がなかった例があります。夫は10年まえから厳密な玄米食、妻は玄米食はねえといいながら白米を食べることが多かったそうです。考えさせられる症例です。また担癌の患者さんが、がんの手術をして以来、和食、野菜、乳酸菌の摂取をきちっとすると、リンパ炉胞が以前に比べて格段に増えてきた症例もあります。これも貴重な症例です。
イギリスの有名な医学雑誌のLANCETの5月号に次のような論文が載りました。すなわち55~64歳でS状結腸内視鏡検査を受けると大腸がんの罹患(かかること)が30%以上減少するということを発表しました。これはS状結腸内視鏡検査を55から64歳までの間に1回受けると、大腸がんにかかったり、大腸がんによる死亡を減らせるのではないかとの仮定にもとずいています。London大学Imperial collegeのWendy S Atkins氏らがこれを検証するために、55~64歳の男女17万432人をスクリーニングを受けた人々と受けない人に割り付け検証を行いました。その結果S状結腸よりもっと深部の大腸がんにかかる割合は36%スクリーニングを受けた人たちでは低いという結果を得ました。このことは内視鏡検査の有効性を示唆していると思われます(LANCET,volume 375,Issue 9726,Pages 1624-1633).ただし、アメリカの雑誌で専門の医師とそうでない医師との間で大腸がんの発見率は異なるとの結果を発表されているため、くれぐれも専門の医師にかかることを勧めます。













