ぺんぎんクリニック
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  • 院長 中條 進
  • 〒735-0006 広島県安芸郡府中町本町1-4-12
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記事一覧

機能内視鏡について

これまでの内視鏡は器質的な病変を見出すことを主眼としていました。しかしこれからは内視鏡の通り道の機能までみなければならない時代が来ると思います。声帯の観察をする場合に、腫瘍の有無をみるだけでなく、声帯の動きに左右差はないか、例えば右は動くけれども、左の動きは悪い場合には、同側(左の第X神経の梗塞あるいは神経の通り道)の障害を考える必要がでてきます。具体的な手や足のしびれ等の症状がなくても脳梗塞の確認のため脳のMRI等を取る必要があることとなります。食道と胃の境では胃液の逆流がないかどうか、十二指腸と胃の境の幽門輪では、緊張が強いかどうか等チェックする必要があります(通常はしっかりと観察するため、胃の動きを止めるための薬をうって内視鏡検査をしますが、緊張の強い人(交感神経過敏な人)はそんなこととは関係なく動きます)。大腸の検査の場合も、憩室が多発する人は、腸管の緊張が強く、腸管の緊張が強い人は、交感神経が過敏な人が多いようです。血圧が高いとか、糖が高い等の症状を呈することも多いようです。このように勝手に命名した機能内視鏡ですが、器質的なものだけでなく喉頭、食道、胃、十二指腸、大腸の動きも見ていくことが必要となります。そうすることで消化管だけではなく、それと関連した他の部位の情報も得ることが可能となります。

過敏性腸症候群について その2

治療の前に診断基準について書いてみたいと思います。過敏性腸症候群の診断基準は2006年に改定されたRome IIIの診断基準と分類が広く用いられています。Rome IIIでは便の性状により便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4群に分類しています。その診断基準は少なくとも6か月前に症状が出現して、最近3か月中の1か月につき、少なくとも3日以上腹痛または腹部不快を認め、かつ次の3項目中、2項目以上を満たすこと
 1.症状が排便により軽快すること
 2.症状の発現が、排便回数の変化を伴う
 3.症状の発現が、便の性状の変化を伴う
となっています。ただし過敏性腸症候群はあくまで機能の病気なので、器質的疾患除外のための血液生化学検査、血球数、下部消化管内視鏡検査、注腸造影検査等は患者に応じて必要です。
 患者さんの話を聞いてから、おなかを調べ、過敏性腸症候群の診断がついた場合に治療となります。治療は生活指導、薬を用いる方法、自律神経のアンバランスの補正、最後に精神科の薬を用いる方法となります。精神科的な薬を用いる方法は、感受性を鈍くし、ストレスをあまり感じなくする方法で、最後に用いる方法だと思います。欧州では催眠療法が盛んで治療効果も高いようですが、日本ではあまり用いられていません。

過敏性腸症候群について その1

過敏性腸症候群は腹痛、排便異常などの消化器症状のほか頭痛、めまい、易疲労感などの身体症状にくわえて、不眠、意欲低下、抑うつ等の精神症状(心理的異常)を呈することも多いようです。このため患者はどの科(内科、心療内科、消化器科、精神科)を受診したらよいかわからず,色々の科を回ってこられる方が多いようです。過敏性腸症候群はストレスが原因あるいは増悪の誘因となることが多く、ストレスがかかると自律神経系のうち、交感神経が優位となるため、交感神経に伴う症状が、強くなります。交感神経はノルアドレナリンを出し、これが末梢血管を収縮させ、手や足を冷えさします。また汗腺も交感神経支配のため足は湿ってきて、過敏性腸症候群の人の多くは、足が冷や汗状態となっています。末梢の血管が収縮すると血流は悪くなるため、頭痛、めまい等の症状も付加されます。消化器については、大腸はゆっくりとした喘動運動をせず、交感神経は括約筋を収縮させるため、お腹をたたく(打診)とポンポコといい音のする非常に緊張の強いお腹となり、腹痛も出現し、腹が張るという症状もでます。このため過敏性腸症候群の人は、消化器の症状をコントロールしながら、身体症状、精神症状をあわせてコントロールする必要があります。次からは具体的なコントロールについて書いてみたいと思います

大腸憩室疾患と繊維食

 最近のストレスフルな世の中で大腸の憩室疾患が増加しています。今回British Medical Journal(BMJ)に食物繊維の高摂取で、憩室疾患による死亡リスクが低下したという論文が載りました。腸の憩室性疾患は腹痛、腹部膨満、便秘等の症状を呈し、一般的な腸疾患でありますが、アフリカと比べ英米などの先進国で患者数が多く、西洋文明化による疾患とよばれてきました。その理由は腸の憩室は十分な繊維質を摂取しないことが原因で出来ると考えられてきたからです。これまでの研究では食物繊維の不足が憩室疾患と関連することが示唆されていて、菜食主義では肉食の人と比べリスクが低いと考えられていましたが、これを実証したエビデンスはありませんでした。そこでオックスフォード大学のがん疫学部門のCrowe 博士らの研究チームががんを中心とする各種疾患と栄養との関連を前向きに調査する大規模コホ―ト研究で菜食や食物繊維の摂取と腸の憩室性疾患リスクとの関連について検討しました。平均11.6年の追跡を行い、対象47033人のうち、15459人が菜食主義者で、812例の憩室性疾患が認められ、そのうち806人が入院し、6例が死亡しました。憩室疾患のリスクは肉食の人に比べ菜食主義の人のほうが低く、1日の食物繊維摂取量との比較的高い(約25g)群では、低い群(14g未満)に比べ憩室性疾患による入院と死亡のリスクが低いと言う結果が出ました。ちなみに日本の場合成人男子の1日摂取目標量は20g、女子の場合は17gとなっています。食物繊維の多い食品からみてみるとゆでいんげんでは約150g、納豆約300g[45gのパックだと7ないし8パック)、玄米だけだと1400gに相当します。またキノコ類のシメジだと640g、大豆だと約300g相当となります。なかなか大変な量ですが、食品を組み合わせることによりなるべくたくさんの食物繊維を摂取し、大腸憩室疾患の予防をしましょう。

新ニッポン人の食卓の再放送をみて

 前々回のコラムにも書いたのですが、新ニッポン人の食卓の再放送番組をみて最近の回腸(小腸を2つに分けた時の大腸に近い小腸をこのように言います)の変化の謎が解けた様な気がしました。前回書いたように、食事の欧米化、インスタント食品、買ってきた総菜等いろいろな原因が回腸の変化を引き起こしていると考えられますが、和食離れ(確かに洋食はおいしいのですが)、食習慣が一番大きな原因なのではないかと思われます。いろいろと癌に対する研究や、メタボリックシンドロームに対する予防等が行われていますが、根本の食生活、食習慣を改善しない限り、よくならないように思えます。日本に肉食の習慣を持ち込んだアメリカでは、子供たちに野菜を中心とした食事を出すようにしたり、コレステロール値を200以下に保つ運動をしているみたいですが、肉食文化を導入された日本では、コレステロール値はますます高くなり、免疫能は次第に落ち、将来は暗いようです。寿命を延ばすのは、明治、大正、昭和30年くらいまでの人で、それ以降は寿命は短くなるのではと愚考しています。

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